旅する丸窓|Journey through the window


旅する丸窓|Journey through the window

透き通った朝陽は焼けるほどには暑くない、
穏やかな碧い波の上を海鳥が口付けては離れていく。
美しい南太平洋の朝だった。

午後になるとそれが嘘だったように、
あたりは黒雲に覆われていた。
突然、視界を遮ったのは島全体が緑色の塊だった。

険しい斜面と濡れた森、
あの裏側には果たして
どんな景色が広がっているのだろうか。

巨大生物でもいるかのような神秘的な佇まい。
百を越える島が点在する仏領ポリネシアには
未知の領域がまだ残っている気がする。

いつか憧れたヴェルヌの世界観を思い出し、
胸の鼓動が早くなった。
旅行はいつだって
冒険になる可能性を秘めているのかもしれない。

雑誌『海』連載企画|ミステリアスアイランドより抜粋